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大学生フットゴルファー平野靖之&内田健太の「今」をインタビュー
関東は日本代表の肩書きを持つフットゴルフ選手たちが集中している激戦区です。日本代表になるためにはライセンス登録が必須。関東在住でジャパンオープン出場経験を持つ大学生は多数いますが、ライセンス登録をしてシーズン中、出場し続けているのは2選手のみ。平野靖之選手と内田健太選手です。
彼らは共に日本大学の4年生。関東に拠点を置く「大学生フットゴルファー」という稀有な立場は、今春の大学卒業と共に失います。そうなれば必然的に、これまで背中を追いかけてきた社会人のフットゴルフ選手たちと「同じ」立場になります。
目の前に迫る分岐点まで、残された期間は少し。まだ若い彼らは、長く社会経験を積んできたフットゴルフ選手たちとは別の視点や発想で現在のフットゴルフ界を見て、未来について考えているかもしれません。
今回は、大学卒業間近の平野・内田両選手の「今」を、インタビューで切り取ってきました。
平野選手&内田選手の自己紹介動画
平野選手は日本代表選出経験3回。浦和レッズが運営しているスポーツ施設、レッズランド(※)でアルバイトし、勤務時間終了後はレッズランドを拠点としてフットゴルフの練習に励んでいます。
平野・内田両選手に、レッズランド内のフットゴルフスペースでフットゴルフをしてもらいながらインタビュー。そして、自己紹介動画も撮影してきました。
(平野靖之選手 自己紹介ムービー)
(内田健太選手 自己紹介ムービー)
自己紹介動画の中で、この日のコーディネートについて解説してもらいました。ドレスコードに沿った正装で、サッカーボールを思いっきり蹴った経験を持つ方は滅多にいないと思います。滅多にないことが正式なマナーとして根付いている、それはフットゴルフが持つ特有の魅力といえるのではないでしょうか。
高校時代からの友達同士で一緒に始めたフットゴルフ
(写真:平野選手)
―二人がフットフットゴルフを始めたきっかけを教えてください。
平野靖之(以下、平野)「たまたまテレビをみて興味を持ったことです。そのあと、フットゴルフのジャパンオープンが開催されると知って、会場が実家から近かったので出場してみようって。大学2年生の5月でした」
内田健太(以下、内田)「僕はヤス(平野選手)に誘われて。出た回数も同じです」
―フットゴルフを通して知り合ったのではなく、元々友達だったということですか?
内田「はい。高校1年生の頃から友達です。大学もずっと一緒です」
平野「僕らは附属高校出身なんです。どちらも中学時代までサッカーをしていたけど、高校ではやっていなくて」
内田「それで久しぶりにフットサルでもやりたいねってお互い考えていて。そういうところで気が合ったのかもしれないです」
―フットゴルフを始めたことで人生が変わったと思いますか?
内田「思います。僕は大学入ってから何の目標もなく、なんとなく生きていた気がするのですが、フットゴルフを始めて、日本代表を選ぶ大会が何度もあって、僕はまだ選ばれていなくて。日本代表になりたいという目標を持って生活するようになりました」
平野「僕もそうですね。就活せずに大学卒業後はフットゴルフでやっていくことにして。フットゴルフで人生が変わったというか、フットゴルフが人生になりました。フットゴルフ界には年上の選手が多いですが、フットゴルフを通してコミュニケーションを取るようになり。普通の学生では経験できないことを経験させてもらっているのだなって。正直、フットゴルフに出会わなかったらどうなっていたのだろうって、今思うと怖いです」
内田「たしかに。どういう大学生活になっていたか、本当に怖いです!」
(写真:内田選手)
二人が思うフットゴルフで1番大切なものは「メンタル」
―プレースタイル、もしくはプレーする上で重視していることを教えてください。
内田「キックを飛ばせる力はあると自負しているので、なるべくピンに近づけるようにしています。僕は繊細さがあまりないので、パットはなるべく近くから蹴りたいです。だからキックの飛距離を大事にしているし、飛距離は僕の強みだと思っています」
平野「僕は性格上、ウチケン(内田選手)みたいな攻めたプレーはなかなかできない。ビビリなんです!でも、そこが自分の強みでもあるかなって。安定性、パーセーブ率。実際に僕が日本代表として出場したアメリカの大会も、たまたまですが、難しいコースをワンボギー、ワンバーディのイーブンになったのです。16個パー。そういう安定性が武器かなって」
―競技志向でフットゴルフをプレーするうえで大切だと思うものを3つ挙げてください。
平野「1にメンタル、2にメンタル、3にもメンタルです」
―技術は入らないですか?
平野「はい。正直、1、2、3はメンタルだと思います」
―技術よりメンタル?
平野「技術にせよ考え方にしても、それを引き出せるのはメンタルだと思うんです」
内田「僕は1にメンタル、2に考え方、3つ目くらいに技術だと思っています」
―同じ目標を持つ選手同士でも、二人の考え方は違うのですね。
平野「はい。でも、どちらが正解かどうか答えはまだ出ていません」
内田「それがフットゴルフというスポーツです」
平野「正解を今の選手たちが作っている途中なのかもしれないです」
―ちなみに、メンタルにも様々な色がありますが、具体的には試合中にどのような状態になっているのが良いのでしょうか。冷静沈着?それとも勝ちたいって燃え上がる方が有利ですか?
平野「それは選手の個性次第です。うおーっていってドーンってスコアを出す選手もいますし、淡々とこなして有利に進める選手もいます」
平野・内田両選手は挫折をどう乗り越えるのか
(写真:平野選手)
―メンタルが大切とのことですが、フットゴルフ選手生活の中で、メンタルに影響を及ぼすような挫折経験はありますか?
内田「僕はまだ挫折中というか、光を見ていない。そういう選手なので」
―例えばフットゴルフで日本代表を目指すくらい競技志向を貫くなら、継続して試合に出場する必要がありますが、内田選手はその中で毎回のメンタルをどう切り替えていますか?
内田「2016年のアジアカップの時、同時期にフットゴルフを始めたヤスが日本代表になって僕は落選しました。その時は食べ物がのどを通らないくらい落ち込みました。ヤスは結果を出していたので、入るとは予想していましたが、いざ結果が出ると本当に悔しかったです。去年も夏のUSプロアマの日本代表を目指したのですが落選しました。その時は年下の辻本が代表に入ってもう本当にフットゴルフを辞めたいと、申し込んでたジャパンオープンも欠場しようとまで考えました(笑)そんな中、協会の方や尊敬する年上の選手達が、今思い出しても涙がでそうなくらい、本当に優しくありがたい言葉をかけてくれました。僕に本当に期待をしているといってくださった先輩もいました。そういった言葉や期待に応えたい、もっと頑張らないとという気持ちを持つことができたから立ち直ることができ、切り替えてまた頑張ることができたんだと思います」
―平野選手はどうでしょうか?
平野「ウチケンの後はちょっと話しにくいですね。先に言えばよかった(笑)僕の場合は2016年の日米対抗戦です。アメリカ代表が8選手、日本代表が8選手。計16名の選手で戦ったのですが、16名中僕がダントツの最下位だった。それまではそこそこ結果を出していたから、行けるだろうって気持ちがあったのに、散々な結果でした。その時初めてフットゴルフを辞めたいと思いました。無というか。初めて味わった感情でした。僕のスコアは15オーバーとかで。他の選手は皆1桁台だったし、アンダーの選手もいたのに。僕だけ。大会の後、食事会があったのですが、ずっと部屋に閉じこもっていました。それくらい落ち込みました。でも・・・性格なのか、自然に立ち直りました」
―「次入れたら優勝じゃん」と、いう場面で盛大にミスをしてしまった。それは大なり小なりメンタルが揺さぶられると思いますが、もし、そのような場面に遭遇したらどう切り替えますか?自然に切り替えられますか?
内田「僕は自然には無理です。切り替えよう切り替えようって考えていきます。それは、経験を重ねて、最近やっとできるようになってきました。失敗して学ぶタイプなのです」
平野「僕も自然には立ち直れない側で。最近では、ゴルフの本を読んでプロゴルファーのメンタルを参考にしています。ボールを蹴ってから、次に蹴るまでの自分のメンタルの状態を1から5段階で判断して、常に3にもっていこうと。勝っていて気持ちが高ぶっていても、負けていて気持ちが落ち込んでいても、常に3に持っていくことで、安定させることを意識するようにしています」
学生視点でみたフットゴルフ普及の課題
(写真:内田選手)
―フットゴルフは、対応しているゴルフ場が全国に多いとはいえないことから、気軽にできないスポーツと思われやすい気がします。その点についてどう考えていますか?
平野「フットゴルフは思いのほか身近だと知って欲しいです。サッカーボール1個あればできるスポーツです。確かに、プレーできるゴルフ場は限られているのですが、公園に行ってペットボトル1個立てるだけで、実は成り立っちゃうのです。もちろんそれでは正式にはフットゴルフではないかもしれませんが、そういう身近さはあるスポーツです」
―近くにプレーできるゴルフ場がなくても工夫次第で実は簡単にできるということでしょうか。
平野「そうです。ゴルフ場でプレーできるならベストですが、それが難しくても工夫次第です。競技志向としては日の丸を背負うチャンスがあるのもフットゴルフの魅力です。日本代表の先輩がいっていたのですが、フットゴルフの良さは世界につながっているところです。競技体制がしっかりしているし、オリンピックとか関係なく世界の舞台で戦えるっていうのは、魅力ではないでしょうか。身近にできる要素もあるし、競技志向なら世界に羽ばたけるチャンスもある」
―今まで普及活動をしてきて、フットゴルフは今後日本で普及すると感じていますか?
平野「僕は1つだけ思っています。日本人選手が世界の舞台で勝てば普及すると」
内田「僕はそれより前に、まずは環境かなって思っています。今の状態で日本人選手が勝っても、あんまり注目してもらえない気がして。それより先に身近でフットゴルフができる環境が増えていくほうがいいのかなって。そしたらフットゴルフの知名度につながるし、知名度があれば日本人選手が勝った時に、もっと大きな影響を出せるのかなって」
平野「熱い話していい?じゃあ環境はどうやって作るのって話になるんだよね。ゼロをイチにするのってすごく難しいじゃん。今ある環境でどうしたらいいのかっていうのが、日本人選手が勝つことなのかなって思う」
内田「うん。それも1つだとは思うけど」
―普及についても、同じ方向をみていても意見は違うのですね。
平野「それも良いと思います。個性です。間違いはないし正解もありません」
内田「確かに。勝つことももちろん間違いではないはずです」
平野「他のスポーツがそうだったから。ラグビーやフェンシングやカーリングも。日本人選手が勝ったから人気になったというか」
内田「でもさ、勝ったフィールドが違わない?オリンピックとかだし」
―2018年は、ちょうどフットゴルフのワールドカップがありますよね。
平野「そうだ!」
内田「確かにワールドカップなら良い影響あるかも」
footgolfweb.jpでは、インタビューした選手に、次回インタビューする選手を指名してもらうリレー形式を取っています。平野・内田両選手が指名したのは、関西を拠点に活動している学生フットゴルファー高波瀬史人選手と辻本亮選手。
関西では学生が精力的にフットゴルフの普及活動を行い、盛り上げています。日本代表選手として、そして普及活動の面でも中心になっている高波瀬史人選手と辻本亮選手に、ぜひ注目して欲しいとのことです。こちらの2選手のインタビュー記事は2月に掲載予定です。
取材後記
筆者はフットゴルフを追いかけるライターとして様々な年齢、バックグラウンドのフットゴルフ選手達と話をしてきました。
フットゴルフ選手たちはフットゴルフを広めたいという想いを共有している印象です。
社会人のフットゴルフ選手達は、これまで積み重ねた社会経験で物事を判断する能力が発達しているので、できることの範囲が広いです。それに対し、平野・内田両選手が現在の立場でできることは、もしかしたら限られているのかもしれません。しかし、彼らには独特なパワーや柔軟な発想力、そして、目の前にあるのが他者の背中でも、決して目をそらさないで自身の成長のために凝視する熱意があり、それが強みになっていると感じます。
興味深かったのは、平野・内田両選手に「趣味について」聞いてみても、すぐに回答が返ってこなかったことです。フットゴルフについて質問すればすぐに回答するのに、それ以外のことは長い時間回答に悩んでいました。彼らの頭の中はフットゴルフのことでいっぱいになっているということが、話をしているだけで伝わってきました。
脇目を振らずに1つのことを見続けられる意志は、誰でも持てるものではありません。彼らがいずれフットゴルフ界の未来を担い、中心選手として今以上に活躍する日が必ず来ると、思わざるを得ませんでした。
フットゴルフは2018年3月24日(土)からジャパンオープンが開催となります。平野選手、内田選手は初戦から出場予定。彼らの今後に期待しましょう。
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選手プロフィール
平野靖之(ひらのやすゆき) 日本大学4年生
生年月日 :1996年4月1日
アルバイト先 :レッズランド(※)
サッカー歴 :小学校1年生~中学3年生
好きな食べ物 :佐野ラーメン
好きな女性のタイプ:明るくて元気な人
好きなサッカー選手:シャビ・アロンソ
日本代表選出回数 :3回
国内大会の戦績:
https://footgolfweb.jp/player/125/profile
内田健太(うちだけんた) 日本大学4年生
生年月日 :1995年5月5日
サッカー歴 :小学校2年生~中学3年生
趣味 :スポーツ観戦(好きなチームは浦和レッズ)
好きな食べ物 :日本食ならだいたいなんでも
好きな女性のタイプ:しっかりしている人
好きなサッカー選手:原口元気選手
国内大会の戦績:
https://footgolfweb.jp/player/116/profile
※レッズランドについて
住所:埼玉県さいたま市桜区下大久保1771
TEL: 048-840-1541
URL: http://www.redsland.jp/rl_rinen
レッズランドは浦和レッズが運営しているスポーツ施設です。サッカーグラウンドやフットサルコートがあり、浦和レッズレディースや下部組織の練習場にもなっています。敷地内の一角にフットゴルフ併設コースがあり、予約をすれば誰でもプレー可能。コースの予約、詳細については直接レッズランドまでお問い合わせください。
当記事のライター
text by 有本圭花(2018年4月~ いせさきFM ラジオパーソナリティ)
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